市原市・デンカ・東洋スチレンの連携プロジェクト《後編:東洋スチレンの取り組み》
マスバランスをキーワードに、サーマルリサイクルを減らし、マテリアルリサイクルを補完する、前代未聞の完全循環可能なケミカルリサイクル・プラントを稼働。
地道な普及啓発活動、法改正を働きかける、ソーシャル・イノベーション前夜を取材
マスバランスをキーワードに、サーマルリサイクルを減らし、マテリアルリサイクルを補完する、前代未聞の完全循環可能なケミカルリサイクル・プラントを稼働。
地道な普及啓発活動、法改正を働きかける、ソーシャル・イノベーション前夜を取材
千葉県市原市
マップ&リストN0.017
▶︎CEマップ&リストはこちら
取材:協議会 杉⽥事務局⻑ 内川監事
取材協⼒:デンカ株式会社 千葉⼯場 東洋スチレン株式会社 サスティナビリティ本部
2025年12月11日公開
出所:東洋スチレン資料より
東洋スチレン株式会社は、総合化学メーカーのデンカ株式会社を主な株主とする、ポリスチレン(★以下PS)に特化した製造販売会社として1998年に設⽴。
東洋スチレンはデンカとともに市原市と連携協定を結び、国内外に先駆けて、PSのケミカルリサイクル・プラントを稼働しています。
PSは、70%が納⾖やカップ麺等の⾷品容器に使われ、緩衝材の発泡スチロールとしても利⽤されていますが、これらは使い捨ての容器やケース等で、ごみ問題に直結することから、率先してリサイクルに取り組んでいるようです。
研究所とプラントがある市原市・五井⼯場を訪ね、サーキュラーエコノミー(★以下CE)の最先端を取材しました。
本ページでは、後編として、市原市と連携協定を締結してケミカルリサイクルを実践している東洋スチレンの取り組みを。
別ページでは、前編として、市原市の取り組みを中⼼にレポートしています。
▶前編“市原市の取り組み”はこちら
市原市と東洋スチレンへの取材から、産学官⺠で取り組むべき、⽇本の課題が明らかになりました。
初めに、ケミカルリサイクルって何︖ 他のリサイクル⽅法との違いは︖
PSとPSケミカルリサイクルの特⻑は︖
従来よりスーパーマケットで回収されているPS⾷品トレーは、⼀部はマテリアルリサイクルされ、再利⽤されています。
他⽅、⾼温で化学的に分解し、バージン材として、まるごと新品にするのがケミカルリサイクル。
PSケミカルリサイクルは、通常品と同じ性能、同じ品質のPSを得ることができ、安全安⼼にPS製品をリサイクルできる技術とのこと。
使⽤済みPSは現在、2〜3割がマテリアルリサイクル。7割がサーマルリサイクルされ、温⽔や発電等に利⽤されています。
CO2排出の多いサーマルリサイクルは、欧⽶ではリサイクルとして認められず、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを増やし、資源循環することが求められています。
東洋スチレンでは、ケミカルリサイクルはサーマルリサイクルと⽐べて、CO2排出を約40%削減できる、と試算しています。
⽯油化学コンビナートのスチレンチェーン、PSケミカルリサイクルの流れとメリット
東洋スチレン五井⼯場では、⽯油化学コンビナートにおいてパイプラインを通して運ばれた原材料を利⽤して、PS樹脂からその成形品までを⽣産しています。
原材料の流れをはじめ、東洋スチレンのPSケミカルリサイクルの仕組みについて説明します。
初めに、近隣のコスモ⽯油で、⽯油からプラスチックや合成繊維、合成ゴム、ガソリンの原料となるナフサを⽣成。
次に、隣接する丸善⽯油化学で、ナフサを熱分解し、単量体のスチレンモノマー(★以下SM)の共有源となるオレフィンを⽣成。
これを、東洋スチレンが⽴地するデンカ⼯場内で、PSの原料となる基礎製品、SMを製造。
これを受け、SMを重合体の⾼分⼦化合物であるポリスチレン(PS樹脂)にするのが東洋スチレン。
さらに、同じ⼯場敷地内にあるデンカポリマーというグループ会社が、⾷品容器等のプラスチック成形品に加⼯する、スチレンチェーンを構成しています。
このプラスチック成形品を市⺠の皆さんが利⽤消費後、回収してケミカルリサイクルでモノマー化し、PS樹脂に戻すことで循環の輪ができあがります。
ここまでが、下図の⽯油から⻘丸“プラスチック成形品”までの説明です。下図を参照しながら、読み進めてください。
PSのケミカルリサイクルは、使⽤済みのプラスチック成形品をモノマーまで戻すことで、新品の樹脂から新品の容器を製造できる、完全な循環が可能なシステムなのだそう。
なお、モノマーまで分解できる樹脂は、⾝近なモノではPSとアクリルの2つだけ、とのことです。
PE(ポリエチレン)やPP(プロプロピレン)は、原料モノマーを繋げてポリマー(樹脂)にしますが、1つ1つの原料モノマーに戻らず、ナフサや⽯油までリサイクルする必要があり、より多くのエネルギーを消費し、より多くのCO2を発⽣させるそうです。
PSをしっかり分別して回収できれば、ショートループで効率的に循環できることも、PSケミカルリサイクルのメリットのようです。
PSケミカルリサイクルの実際と、使⽤済みPSの受け⼊れ条件
初めに、市原市が使⽤済みPS⾷品容器等の5品⽬を市内14拠点で回収し、中間処理業者で異物を除去して塊に圧縮・梱包されたベールを、東洋スチレンが買い取る仕組み。
この他、東洋スチレンはリサイクル原料として、顧客企業である成形加⼯メーカーから出る端材等、ポストインダストリアル材と、消費者から廃棄されるポストコンシューマー材を回収。
ポストインダストリアル材は、顧客企業から買い取り、ポストコンシューマー材については、イベント等で回収し、その場で溶かし固めたインゴット等をリサイクル原料としています。
次に、搬⼊されたベールを溶かし固め、さらに粉砕したPS粉砕品を原料として、熱分解炉に投⼊し、約500°Cの熱をかけてガス化し、さらに、ガスを冷やして熱分解オイルを⽣成。
この段階では、不純物等が⼊っているため⾊がついていますが、さらに蒸留して精製することで、無⾊透明なリサイクルスチレンモノマー(★以下リサイクルSM)になるそうです。
これを従来からある重合プラントに投⼊し、“リフレッシュPS®︎”という樹脂を製造しています。
異素材が混在している廃プラスチックの⼀般的な分別⽅法としては、光学機械による選別がありますが、フィルム状等、完全に分けられないモノもあるそうです。
また、マテリアルリサイクルで問題になっている、汚れや⾊等も、ケミカルリサイクルでは分⼦状に分解されるため問題ない、とのこと。
リサイクル原料の状態で、純度100%の使⽤済みPSは少なく、多くは紙ラベルやPPのフィルム等、様々なモノが混在。東洋スチレンでは、85%以上スチレンが含まれていれば、受け⼊れています。
PSケミカルリサイクルのリサイクル率が約50%なので、85%でも42.5%のリフレッシュPS®︎が得られるため、⽣産上好ましい下限として85%で線引き。⾔い換えれば、15%までならスチレン以外のモノが⼊っていても受け⼊れています(塩ビや難燃剤、PET樹脂は除く) 。
出所:東洋スチレン資料より
リサイクルSMを製造するプラントでは、様々な検証を重ね、2030年を⽬標に、より⼤規模な社会実装を⽬指しています
プラントの処理能⼒としては、年間約3,000トン(約10トン/⽇)の使⽤済みPSを投⼊可能。PSの原料となるリサイクルSMが約50%⽣成されるため、使⽤済みPSの約半分を、再び新しいPSにリサイクルする設備と⾔えます。
その他に副産物である副⽣油等が約40%出ますが、これは⼯場の燃料として使⽤。少量発⽣する炭化物も、炭素製品の原料として有効利⽤することを検討中。残る約5%のガスは、プラント内で燃焼。
ケミカルリサイクルは、副産物もケミカル品のため、これらを有効利⽤する連携企業やプロセス等を⾒つけることで、現在燃料としているモノも、ケミカル品として回収できる可能性があります。
2023年に完成したケミカルリサイクルプラントでは、2025年現在、実証運転の段階で、ポストインダストリアル材にポストコンシューマー材が混在する条件下で、様々な影響について検証しながらプラントを稼働し、概ね2030年に、より⼤規模な社会実装を⽬指して取り組んでいます。
ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクルを補完します
PSによる成形品の70%が⾷品容器ですが、⾊つきや汚れの残っているモノ、印刷やアルミ蒸着されていたり、紙やPPフィルムが貼ってあるモノは、マテリアルリサイクルに向いていません。
他⽅、PSケミカルリサイクルは、熱分解し、蒸留精製して異物を除去したリサイクルSMをリフレッシュPS®︎にすることでバージン材と同品質にできるため、条件の厳しい⾷品包材⽤途にもリサイクル可能。
なお、設備を傷めるため、対象外としているのは、塩ビや難燃剤、フルーツ等を⼊れる透明のPET樹脂等。透明容器になると、PET樹脂はPSと区別が難しい、といった課題があるそうです。
マテリアルリサイクルにできないことを補完する⽅法として、ケミカルリサイクルを通して、PS、さらには、プラスチック全体のリサイクル率向上に貢献することが、東洋スチレンの基本的な考え⽅です。
東洋スチレンとしては、“リサイクル率を上げるために、品質が劣化し続けるカスケードリサイクルではなく、少なくても等価となる⽔平リサイクルでなければ、市場に受け⼊れられないだろう” と考え、“今後、リサイクル率を上げていく⽅法として、ケミカルリサイクルの割合が増えていく” と予想しています。
このような⽅針のもと、同社は、PSがリサイクルに適した材料であることを、また、100%⽯油由来のバージン材で製造する場合と⽐べて、CO2を約40%削減可能と試算し、実証中です。
PSリサイクルロードマップをベースに、ケミカルリサイクルを事業化
東洋スチレンでは、⽇本プラスチック⼯業連盟がカーボンニュートラル達成に向けて作成した、PSに係るリサイクルロードマップに提⽰されている、“単純焼却を⽌め、サーマルリサイクルも極⼒減らしていく”といった、2050年のありたい姿に合わせて取り組んでいます。
ケミカルリサイクルには、プラスチック成形品を燃料や原料の油に戻す油化や、燃料や⽔素、アンモニア等の化学製品の原料となるガス化が含まれますが、東洋スチレンとしては、その中の10%がモノマー化になる、と想定。
まずは2018年時点で、国内で年間約60万トン製造されていたPSの、10%である約6万トンをPSメーカー3社でケミカルリサイクルすることを⼀つの⽬標としています。
マスバランス⽅式が⽣み出す新たな価値観と、新たな製品開発・販売⽅法
東洋スチレンのPSケミカルリサイクルプラントの処理能⼒が、年間約3,000トン(1⽇約10トン)と、プラントとしては⼩規模で、⽣成できるリサイクルSMは、リサイクル率50%で1⽇約5トン。
他⽅、従来からPSを製造しているプラントでは、SMが1⽇約100トン必要となるため、ケミカルリサイクル由来の100%リサイクルSM分だけでは稼働させることができず、バージン原料(⽯油由来の原料)と混ぜてリフレッシュPS®︎を製造することになります。
そこで、東洋スチレンをはじめケミカルリサイクルに取り組むPSメーカーでは、特性の異なる原料が混合される場合、投⼊された特性原料の量に応じて、製品の⼀部にその特性を割り当てる“マスバランス⽅式” を採⽤。
そこで、例えば“リサイクルSMが◯◯%含まれる” と考えるのではなく、ケミカルリサイクル原料を、マスバランス⽅式で割り当てられる、とすることで、ユーザーがサステナブルな製品の割合を⾃ら選択できるようにしています。
東洋スチレンでは、新たな価値ある商品として、リフレッシュPS®︎を製造販売する⽅法を検討しています。
PS以外の製品が今後、PSに置き換えられる可能性は︖
オリジナル原料まで戻せて資源循環しやすく、⾷品容器にも使えるPSの、⽤途を拡⼤したり、PSに置き換える動きは想定できないでしょうか︖
プラスチック製品にはそれぞれ特性が求められるため、すべてをPSに置き換えることはできませんが、“リサイクル率を上げるため、PSにしたほうが良い”、という価値観に変われば、PSに置き換わる可能性もあるようです。
例えば、現在カップ麺の容器として紙が増えています。紙には、環境に優しイメージがありますが、資源調達から廃棄までのライフサイクルにおけるエネルギー消費やカーボンニュートラル等の視点で⽐較すると、どうでしょうか︖
今ようやく、そのような議論ができる、スタート地点に⽴ったところのようです。
イベントや特定施設等、クローズドな環境で完全循環を⾒える化して、回収量アップ︕
イベントであれば、今すぐ地域連携は可能です︕
東洋スチレンは、PSの完全リサイクルが可能であることを⽰すために、PS製品の利⽤と廃棄をコントロールできる環境で、社会実証に取り組んでいます。
例えば、スプーンや⾷品パック、コップ等、PSで製造可能なアイテムを、スタジアム等に限って統⼀してもらうことで、分別せずに⼀括回収して、その場で200°Cで溶かし固めたインゴットにしています。
廃棄物は、運搬許可を持った企業でなければ持ち出せませんが、事前に、スタジアム等でつくるインゴットについて⾃治体に相談し、廃棄物でなく有価物、と⾒なされれば、宅配便で配送できるそうです。
それをプラントでリサイクルして製品にする、といったイベント対応型のビジネスモデルを実践中。
PSケミカルリサイクルに投⼊する原材料としては、ポストインダストリアル材にポストコンシューマー材を加えていくことになります。
ポストインダストリアル材については、顧客企業からの確保を進める⼀⽅、ポストコンシューマー材については、市原市をはじめ他の⾃治体や関連企業と連携するため、成功事例を積み上げている段階だそうです。
環境に対して先進的に取り組んでいる仙台市は、東洋スチレンの考えに賛同し、集めたPSをその場で溶かし固めたインゴットに対して、“これは資源で有価物“と判断。2024年からこの取り組みが本格的にスタートしました。そして、スチレン分が80〜90%あれば、原料になることを確認。
神奈川県中井町では、イベントにおけるプラごみ0を実現。ここでは使⽤済みのPSを洗浄せず、その場で溶かし固めましたが、インゴットにすると、匂いも気にならず、⾼温で加熱しているためカビが⽣えないそうです。
飲⾷の現場でデモを⾏うため、通⾏⼈も“何やっているの︖”と興味関⼼を⽰し、“プラスチックは、こうやってリサイクルされるんだ︕”と理解を深めているそうです。
イベントのプラごみ問題は⽇本全国どこにでもあり、容器を決めて実施するのは⼤変有効で、今後、多くのイベント関係者から⽀持されるでしょう。
2⽇間で5万6千⼈が来場した⿃取でのフードフェスティバル以降、様々な引き合いがあり、サッカーJ2リーグのベガルタ仙台では、2025年6⽉から“ケミ・リサSENDAI”プロジェクトをスタート。
スタジアム内で提供される飲⾷物容器をPSに統⼀して、使⽤後にスタジアムで回収して加熱減容し、さらに輸送してケミカルリサイクルするプラスチックの完全循環です。
ベガルタ仙台では、エコステーションを7カ所設置して、⼈⼿をかけて⼤々的に回収し、スタジアムグルメのPS容器については、ボランティアが分別しているそうです。Jリーグは地域連携を重視していることから、仙台市と協働。
インゴットに加熱減容する機械は、千葉県内の教育機関やイベント会場等に持ち込むことも可能だそうです。
横浜の⼩学校で実施した際は、最初にケミカルリサイクルについて授業を⾏い、“PS容器や緩衝材等を集めてきてね”と宿題を出し、1カ⽉後に各家庭から持ち寄ってもらったそうです。
ケミカルリサイクルして成形した箸。これをイベントで利⽤したあと、さらに回収してリサイクル原料として投⼊
今後は、透明なPETとPSを判別する機械を開発してスーパー等に設置し、地域循環を拡⼤
東洋スチレンは今後、機器メーカーと協働して、本格的な判別機を開発し、スーパーマーケットに設置する計画があるそうです。
グループ会社のデンカポリマーでは、市原市内で透明容器を製造していることから、今後は、PETと区別が難しい透明な使⽤済みPSの回収に注⼒し、市原市内での循環を⽬指していくようです。
現在、実証事業として技術⾯をクリアし、運転準備完了。
2026年度より、リフレッシュPS®︎として販売開始予定
技術⾯では、ポストインダストリアル材を⽤いて、すでに箸等の最終製品を成形して、物性に問題がないことを確認済み。
経済⾯では、顧客と今まで以上に踏み込んだ商談を⾏っていく予定で、顧客からは既に、“今後こういうリサイクル品が欲しい” という要望をもらっているそうです。
2024年7⽉〜2025年8⽉までの間、市原市との取り組みで回収し、異物を除去して塊に圧縮・梱包されたベールが2トン余り。
2025年前半までに、ポストインダストリアル材で技術⾯等の評価を⾏い、同年9⽉頃からは、市原市が回収したベールやイベントのインゴットといったポストコンシューマー材もケミカルリサイクル専⽤のプラントへ投⼊。
リサイクルSMからリフレッシュPS®︎を⽣産し、各種確認評価を⾏った上で2026年度よりリフレッシュPS®︎として販売開始予定。
最終的に、どのようなプラスチック成形品にしてプレゼンテーションするのが良いか、検討中とのことです。
⽯油価格が⾼騰しても、リサイクル材が割安に感じられる時代は来ません
度重なる⽯油危機のなかでも、デンカグループが⽯油関連製品のコストを下げてこられたのは、年間約27万トンのSMを⽣産できるプラントを建設し、スケールメリットを拡⼤できたからだそうです。
ケミカルリサイクルプラントは年間約3,000トンで、この流れに逆⾏しているため、必然的に製品単価は⾼くなってしまいます。
どうすれば、循環経済を実現できるのでしょうか︖
個社だけでは解決できない社会課題に対して、2030年までにリサイクル関係者の環を広げ、経済⾯についてクリアしていかなければなりません。
経済性について東洋スチレンは、⾚字にならない前提で、コスト⾼になるリサイクル材に対して、顧客にどれくらいコストを認めてもらえるか。顧客や関係者と対話しながら、⾏政の⽀援・補助も絡めたビジネスモデルを構築することで、経済合理性をクリアすることが課題、と考えているようです。
“どこに⾦がかかるかと⾔えば、分別・回収“。
解決の第⼀歩は、関係者全員の積極的な参画
プラスチック製造の原料を、ナフサから使⽤済みPSに変える取り組みに対して、⼤きな課題が分別と回収。
スケールアップやコストダウン、効率化を⽬指して、現在、経産省では、光学系選別機を⽤いた⾼度ソーティングという⾼効率な分別システムを検討しているそうです。
ヨーロッパは先⾏していますが、機械の価格が億単位のため、⽇本では導⼊が進んでいません。
機械が普及して価格が下がること、分別回収に市⺠が積極的に参加すること等が、CE実現に必要不可⽋なようです。
資源循環に対して市⺠にも多少負担してもらえればCE実現が近づきますが、それには10年、20年かかる、と東洋スチレンは予想。そこに⾄るまでは、⾏政による助成・補助等の仕組みが必要になりそうです。
千葉県内のリサイクルプラントが連携して⼀括回収し、コンビナート内で“私たちはPSがほしい”、“私たちはPEがほしい” と分別・分配することが望ましい・・・社会変⾰へ向けて、経産省の実証プロジェクトがスタート
市原市が回収する使⽤済みPSだけでは⾜らず、様々な⾃治体で廃プラを⼀括回収し、関係各社で分別できるような社会的な仕組みが構築できれば、スケールメリットの追求も可能ではないでしょうか︖
それを“実証してみよう︕”、と経産省が主導し、2025年度事業として実施しています。実証事業のタイトルは、“広域⾃治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業”。都市を選定し、回収した廃プラを選別。PETのマテリアルリサイクルはA社が担当・・・PSのケミカルリサイクルは東洋スチレンが担当・・・2025年9⽉〜12⽉に実証検討。
2025年度のまとめを踏まえ、2026年度以降、経産省主導により、全国からモデル地域を選び、広域連携を実施しよう、ということで今まさに取り組んでいる最中だそうです。
社会全体で効率を⾼め、スケールアップするためには、コンビナートのサイクルが、CEのサイクルに発展することが、現実的で望ましいようです。
さらに、回収業者等とも協業し、社会に実装するときは、個社ではなく、共通の⽬的を持つ複数の企業・団体が連携するコンソーシアムとして活動する必要があるようです。
⽇本プラスチック⼯業連盟が作成した“2050年のありたい姿” に近づくために、廃プラを熱分解して炭化⽔素油を年間何万トン、何10万トンと⽣成する油化に取り組んでいる企業を含め、社会全体でCEに移⾏できて初めて、価格についての本格的な議論を始めることができるようです。
プラごみ問題の改善やCO2削減という社会的なインパクトを追求し、1社では解決できない社会課題であるCEを実現するには、産学官⺠が連携し、社会システムを⼤きく変える必要があるようです。
新市場開発のためのブランディング。理解者・協⼒者の発掘から関係構築へ
イベントで回収した使⽤済みPSを、どのような製品に⽣まれ変わらせるのが効果的か︖、といったテーマに対して、例えば、ベガルタ仙台であれば、ブランド価値を⾼めるグッズ等も有効でしょう。
実際に、防災ホイッスルをつくり、ベガルタ仙台で無償配布したそうですが、商品化されるチャンスも⼗分にあるでしょう。
⾷品容器は現在、⼀般的に使い捨てで、1円でも⾼かったら買わない、という世界。新市場を開拓するには、CEに対する理解者を増やす活動を同時進⾏で⾏う必要があります。
デンカグループには、 25年4⽉にリリースしたスチレンチェーンと適切なリサイクル⽅法等による独⾃の資源循環システムの総合ブランド“D-NODE™” というブランドがあり、ブランディングの取り組みが始まっています。
“スチレン系材料の複数の循環の結び⽬(NODE)にデンカグループがなる” という思いを込め、様々なステークホルダーとの連携を未来創造図としてイメージしているそうです。
“使い捨てだから”、“付属品だから”、“タダ同然の値段だから”・・・コストダウンを追求してきたプラスチック製品に対して、“捨てない”、“回収して使い続ける” という価値転換とともに、協⼒も含め、課⾦できる仕組みが求められています。
再⽣されてごみにならない、分かりやすいスキームを⾒える化することで、賛同者・参加者を増やすことができるでしょう。
近未来に求められる“バイオプラスチック+ケミカルリサイクル”
⽯油由来の原材料を減らしたバイオブラスチックでさえも、リサイクルしないと資源の有効活⽤にならないため、リサイクルするのが近年の傾向。
現在、PSのケミカルリサイクル率は50%なので、新品のPSを製造するには、⽯油由来の原材料を50%を使わなければいけません。それをバイオ由来にすれば、化⽯燃料を減らし、資源循環できることから、新たな製品カテゴリーを⽣み出すことができます。
原油からプラスチック原材料を⽣成する最初の⼯程が、最も多くのCO2を排出しているため、原材料がバイオ系に変わるのは、CO2削減には効果的ですが、ごみ問題となるとバイオだけでは解決しません。
そこで、資源循環するケミカルリサイクルが真価を発揮。もちろん、東洋スチレンだけで解決できることではなく、社会全体でバイオ利⽤を増やし、ごみを削減する、といった取り組みが求められます。
環境を守るための廃棄物処理法が、循環型経済・社会の壁に︖
リサイクルしたいモノの発⽣場所のある地元⾃治体と取り組むことが、資源循環の第⼀歩
廃棄物については、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が定められ、⾃由に運ぶことができません。
産業廃棄物は、企業の事業活動によって発⽣する廃棄物で、20種類に定められ、排出事業者の責任で処理するため、所在地の市町村から移動可能で、県が所管しています。
⼀般廃棄物は、家庭や⼀部の事業所、飲⾷店から出るごみを市町村の責任で処理するため、所在地の市町村から移動できず、移動する場合は、出⼝、⼊り⼝、双⽅の市町村に相談し、また、市町村から県に相談・確認する必要があります。
当初は、なかなか回収できず、苦労が絶えなかったという東洋スチレンですが、それをどう乗り越えて資源回収の仕組みをつくるか、市原市役所や千葉県庁とも議論を重ねてきました。千葉県はかつて不法投棄が多く、ごみの移動に対して⾮常に厳しいそうです。
法律には様々な解釈があり、最終的には“総合判断説” という、5つの要素を総合的に考慮する考え⽅によって判断し、“これ資源です”、“これ資源ではありません” と区別されます。
総合判断説は、“物の性状”、“排出の状況”、“通常の取扱い形態”、“取引価値の有無”、“占有者の意思” といった5つの要素から、総合的に判断する考え⽅で、最終的に、そのモノが不要になった“廃棄物” か、価値のある“有価物” かを決定します。
市原市とのリサイクルの取り組みは、業界関係者の間では広く知られ、東洋スチレンの顧客である容器メーカーをはじめ、⾷品メーカーや飲料メーカー等のブランドオーナーのなかには、“市原市と⼀緒に取り組みたい” という要望があるそうです。
しかし、“リサイクルしたいものの発⽣場所が他の地域にあれば、地元⾃治体と⼀緒に取り組んだほうが良いです。そちらと話をするなら、市原市の事例を踏まえて同⾏して、お話をします”とアドバイスしているそうです。
ケミカルリサイクルに必要不可⽋なモノマー化。
技術進歩や社会変化にマッチした、容器包装リサイクル法改正へ
法律の問題になり、最終的に“環境省に⾏かないとダメ”という話になれば、個社ではなく、団体を通して、“ここをこうしうてほしい”と具体的に要望することが重要で、そうしないと国も動けません。
例えば、容器包装リサイクル法に基づいて回収したモノを再⽣化する際には、品⽬が決まっています。
廃プラ等を熱分解して油やガス、炭素などの化学原料や燃料を⽣成する“油化” は品⽬に⼊っていますが、油化と同じケミカルリサイクルの⼀種である“モノマー化” が⼊っていない、といった問題があるそうです。
そこで、東洋スチレンから公益財団法⼈ ⽇本容器包装リサイクル協会に相談したところ、“それは環境省の管轄”という話になり、現在、環境省に向けて取り組んでいるそうです。
このように、容リ法で回収したモノをケミカルリサイクルできないのが現状で、品⽬として再定義する必要があり、ケミカルリサイクル(モノマー化)に対する社会的認知も拡⼤しているなか、東洋スチレンとしては“急いでいただきたい” と願っています。
ペットボトルには実績があり、また、容器以外のモノが含まれたボトルでも、⾼度な分解技術を⽤いればリサイクルが可能、といった特例が認められていますが、PSには実績がなく、現在、イベントを含め、地道に実績を積み上げています。
最後に、デンカグループのパーパスや東洋スチレンのミッションについて、ご紹介します
デンカは今、化学の⼒で世界をより良くするスペシャリストになる、というパーパスのもと、世界に誇れる化学で、この社会問題の解決に向けた⼀歩を踏み出します。
その答えの⼀つとして取り組みをスタートしたのが、ケミカルリサイクルです。
東洋スチレンでは、ケミカルリサイクルを“新たな価値を創造する事業” と位置づけ、強みを活かす未来の戦⼒と考えています。
プラスチックメーカーとして取り組まないわけにはいかない、という義務感もあります。
新規事業として位置づけ、社会に貢献し、事業として成⻑させたいと考えています。
国内外に先駆けてスタートした、“市⺠参加のケミカルリサイクル”という画期的な取り組み。
ソーシャル・イノベーション前夜の今、現⾏法制度のもと、できる⽅法で地道に実績を積み重ねて共感の輪を広げ、さらに法制度が現状を反映し、未来を拓くことを願って関係各所に働きかける東洋スチレン。
“産業界と市⺠を巻き込んだソーシャル・イノベーションの夜明けを⽬撃したい”、と願いながら、協議会は、市原市と東洋スチレンの活動をウォッチし続け、これからも皆さまと、情報共有していきたいと思います。
皆さまの参加・ご協⼒をお待ちしています。
一般社団法人 里山ソーシャルデザイン
千葉県長生郡睦沢町岩井深田522
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