BOSO Circular Economy

房総サーキュラーエコノミー推進協議会

市原市・デンカ・東洋スチレンの連携プロジェクト《前編:市原市の取り組み》

国内外に先駆け、産官⺠が協働して、使⽤済み⾷品トレー等のケミカルリサイクルに取り組む市原市。何を⽬指し、また、リサイクル最初の難関“回収” を、どのように実現したのか!?

国内外に先駆け、産官⺠が協働して、使⽤済み⾷品トレー等のケミカルリサイクルに取り組む市原市。何を⽬指し、また、リサイクル最初の難関“回収” を、どのように実現したのか!?

千葉県市原市
マップ&リストN0.016
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取材:協議会 杉⽥事務局⻑ 内川監事
取材協⼒:市原市環境部資源循環推進課 同企画部総合計画推進課 同経済部商⼯業振興課
デンカ株式会社 千葉⼯場 東洋スチレン株式会社 サスティナビリティ本部
2025年12月11日公開

市原市環境部資源 循環推進課

出所:市原市ホームページより

⽇本最⼤級の⽯油コンビナートが⽴地しながら、商業地や住宅地が点在し、養⽼渓⾕をはじめ ⾃然豊かな⾥⼭が広がる市原市は、 “⽇本の縮図”と呼ばれ、また、奈良時代には国分寺が建⽴され、約77万年前の地軸逆転が記録されている“チバニアン” と呼ばれる国際的な地質標準模式地を有する等、多様な魅⼒に溢れています。
そんな市原市では、国内外に先駆け、ポリスチレン(★以下PS)製の使⽤済み⾷品トレーや乳酸菌飲料容器等の回収とケミカルリサイクル推進に挑戦していると聞き、現地を訪ね、取材しました。

本ページでは、前編として、市原市の取り組みを中⼼に。
別ページでは、後編として、市原市と連携協定を締結してケミカルリサイクルを実践している東洋スチレンの取り組みをレポートしています。
▶後編“東洋スチレンの取り組み”はこちら
市原市と東洋スチレンへの取材から、産学官⺠で取り組むべき、⽇本の課題が明らかになりま した。

“市原発サーキュラーエコノミーの創造“を⽬指し、産官⺠の連携をスタート
市原市は、総合計画に掲げた“夢つなぎひときらめく未来創造都市いちはら” の実現に向けた取り組みを推進し、SDGsを活⽤し、地域課題の解決を図るとともに、臨海部企業を含む様々な ステークホルダーとの連携を積極的に図るため、2021年3⽉に、SDGs達成に向けた“市原市 SDGs戦略” を策定。
そのリーディングプロジェクトとして位置づけられたのが、“市原発サーキュラーエコノミーの創造“でした。
2021年5⽉には、内閣府によって県内初の“SDGs未来都市”に。その中でも特に先導的な取り組みである “⾃治体SDGsモデル事業”として、ダブルで選定されました。 そして、2024年5⽉に市原市は、地元コンビナートに⽴地し、使⽤済みPSを新品の原材料に再⽣するケミカルリサイクル技術を保有するデンカ株式会社ならびに同社関連会社の東洋スチレン株式会社と事業連携協定を締結し、使⽤済み⾷品トレー等の回収をスタートしました。

初めに、ケミカルリサイクルって何?他のリサイクル方法との違いは?
市原市は今回、何を回収したの?

市原市環境部資源 循環推進課
市原市環境部資源 循環推進課

従来、スーパーマーケットで回収されているPS製の使⽤済み⾷品トレーは、マテリアルリサイクルされ、さらに、⾷品が接触する部分を、新品のPSシートで包んで再利⽤されます。 また、⾊付き⾷品トレー等はハンガー等にリサイクル。
他⽅、PS製の使⽤済み⾷品トレーを⾼温で化学的に分解し、バージン材として新品にするのがケミカルリサイクル。
PSの廃材は、マテリアルリサイクルが2〜3割、7割がサーマルリサイクルされ、温⽔や発電等に利⽤。
CO2排出の多いサーマルリサイクルは、欧⽶ではリサイクルとして認められず、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルを増やし、資源循環することが求められています。

市原市環境部資源 循環推進課

PSは、納⾖やカップ麺、惣菜等の⾷品容器、また緩衝材としてお馴染みのプラスチックです。
今後、中⾷が⼀般化し、家庭で調理する機会が減ると、ますますPSのお世話になる機会が増えるため、使⽤済みPSのさらなるリサイクル推進が望まれます。

市⺠やスーパーマーケットへのアンケート、試験回収、協議会による役割分担等を経て、拠点回収をスタート
2021年度に基礎調査として、PS製品がどれくらい排出されるか、ごみ質分析や市⺠にアンケートを実施。また当時、どういったかたちでリサイクルしているかを調査するため、市内のスーパーマーケット等の事業者を対象にアンケートを実施しました。
2022年度は、収集運搬、リサイクル処理、といった項⽬に分け、どのようにリサイクルシステムを回していけば良いか、検証しました。
2023年度、前記調査に基づき、市内2つの町会で試験回収を実施。
さらに、市原市ポリスチレンケミカルリサイクルシステム推進協議会を⽴ち上げ、ステークホルダーにおける役割分担、コスト負担等について議論し、さらに、参画している市⺠に対して、どのような感触を得ているか、調査しました。
そして2024年度、プラント運⽤に向け、実際に拠点回収をスタート。
試験回収を経て、2024年7⽉から実際に回収を始めるに当たり、市⺠が⾒れば分かるモノ、ということで、発泡⽩⾊トレー、発泡⾊付きトレー、発泡スチロール、納⾖容器、乳酸菌飲料容器の5品⽬に絞り、市役所や⽀所等、14拠点で回収を始め、今でも継続しているそうです。
2025年度から、東洋スチレンでは、“市⺠の⽅々が排出したPS製の使⽤済み⾷品トレー等を加⼯してプラントに投⼊する” という実践に取り組み、概ね2030年には、より⼤規模な社会実装を⽬指しています。

市原市環境部資源 循環推進課

市原市は、回収・運搬。東洋スチレンは、使⽤済みPS容器等を購⼊してケミカルリサイクル。
デンカは、再⽣PS製品の製造⽀援等で連携。
市原市、デンカ、東洋スチレンに共通の役割として、本事業の取り組みについて発信し、適切な分別の啓発を⾏なっています。
そして市⺠は、市内14拠点に、PS製で使⽤済みの⾷品トレー等を分別して排出。市原市が週に1度回収して中間処理業者に搬⼊後、中間処理業者で異物を除去し、運搬しやすいよう圧縮して塊にベール化。これを東洋スチレンが購⼊してプラントへ搬⼊し、ケミカルリサイクルを実施してリサイクル樹脂を製造しています。
今後、市原市内にあるデンカの関連会社で、リサイクル樹脂を利⽤して⾷品トレー等を製造。
それを市⺠が購⼊・利⽤する、といった市内循環を⾏うことが、この事業の最終的なイメージです。

市原市環境部資源 循環推進課

デンカと東洋スチレン関係者に聞きました
当初、納⾖容器は、汚れや匂いが⼼配されましたが、実際には、きれいに洗浄し、まったく匂いがなく、うれしい驚きでした。
試験回収で、透明パックは、PETやPP(ポリプロピレン)といった材質が混在し、PSの⽐率は20%程度。容器リサイクル法上、材質表⽰は推奨であることから、“プラマーク” しか記載されていないモノもあり、市⺠には判別が難しかったようです。
今回、⼀番良かったことは、市⺠が “やりましょう“ と⾔って参画し、様々な気づきを通して ”資源を⼤事にする”という発想から⾏動変容を起こし、企業と⾏政、市⺠が⼀緒になって取り組めたことです。
⼀般化しているペットボトルの回収とは異なり、PSの回収となると、企業が⾏政に陳情すれば実現できるようなことではなく、東洋スチレンの計画と、市原市の計画がタイミングよくマッチし、⼤きな規模で実現できました。
“本当に集まっているか︖”と気になり、時折、回収拠点に⾒に⾏っています。

実証事業における成果の1つが、市⺠の⾏動変容
事業に取り組むなかで市⺠から、“排出場所が増えて助かる”、“回収拠点が屋外に設置されているため、24時間いつでも出せる”、“今まで燃やすごみとして出していたものを、リサイクルできて嬉しい”といった好意的な意⾒が寄せられているそうです。
他⽅、回収ボックスには容量制限があるので、“いっぱいで出せなかった”、“回収対象の5品⽬がよく分からない”といった意⾒も。
問題点については、⼤型ボックスを追加で配置したり、出せる品⽬を写真やイラストで表⽰したり、分かりやすい広報を⾏う等、逐次改善し、回収量の向上に努めているそうです。
試験回収を終えた後も“今後も続けてやっていきたい”という積極的な意⾒があり、新たな拠点回収ボックスの設置につながり、市⺠の⾏動変容が眼に⾒える形で結実しています。
2021年度、2022年度とアンケートを実施した際に、市内12地区の町会⻑の⽅々が、⾃ら“アンケートやるよ”と⾔って、⾃分たちにどのような協⼒ができるかを考え、リーダーシップを発揮して進めていただき、市⺠アンケートの実施や集計等とともに、議論を重ねることができ、成果へと結びついたようです。

市原市環境部資源 循環推進課

市原市役所第2庁舎地下1階に設置された回収ボックス

2024年度の回収実績については、2024年7⽉〜2025年3⽉までの間で1トンを⽬標としていましたが、実際には2倍近い約1,8トンを回収。市⺠には、たいへん積極的に参加・協⼒いただけたようです。

2つ⽬の成果は、協議会参加者同⼠の⾃発的取り組みへの発展
資源循環を実現するには、資源となるごみを出し、回収・運搬して中間処理を⾏ない、プラントでケミカルリサイクルし、成形加⼯して販売する、という資源循環の各段階において、関係するすべてのステークホルダーを割り当てることが重要と考え、市原市が事務局を担当する、市原市ポリスチレンケミカルリサイクルシステム推進協議会を設置。
市⺠、収集運搬事業者、中間処理事業者、リサイクル事業者、⾷品・飲料メーカー、ショッピングモール、コンビニ、ドラッグストア等の⽅々が参画し、ステークホルダーの意⾒交換の場として、企業連携につながっているそうです。
例えば、ショッピングモールで乳酸菌飲料のポリスチレン容器を回収する等、企業間で連携が始まり、各社、プラスチックごみによる環境汚染や⽣態系への影響を強く認識し、プラスチック製容器包装による環境負荷の低減を図ることを⽬的に、⾃発的な活動へと発展しているようです。

また、市原市には、企業⽴地奨励制度があり、温室効果ガス削減により持続可能な社会を⽬指すGX(グリーントランフォーメーション)に向けて、新エネルギー分野やリサイクル分野等に対して、インセンティブを付与しているため、新たな企業の参画も⾒込まれ、地域の活性化へとつながり、また、設備投資が進む等、経済的な好影響が期待されています。

コスト⾼となるリサイクル費⽤を、どう考える︖
市⺠、⾏政、産業界の、意識・⾏動の変容から、⼈・モノ・情報・⾦・・・の再配置へ
市原市としては、“持続可能な資源循環を構築できるか”、“市⺠の皆さまがリサイクルに対する理解を深め、参加意欲につなげられるか”、“企業間連携等による市内産業の活性化につなげられるか”と考えているようです。
使⽤済みプラスチックを資源循環していく取り組みを通じて、“市原発サーキュラーエコノミーの創造”につなげられるよう、まさに構築中だそうです。

リサイクルにかかるコストを減らすため、経済的なスケールメリットを追求し、周辺地域との連携拡⼤は可能でしょうか︖
家庭ごみ等の⼀般廃棄物は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)により、地域⾃治体の責任で処理するため、基本的には地域外に移動できません。
“市原市周辺の⾃治体がリサイクルしたい” ということで、市境を超えて市原市内に持ち込む場合、市町村間協議が整えば、市原市として受け⼊れることができ、実際に他市町村からの越境処理を多数受け⼊れ、また、他市域内での処理も同様に多数⾏っているそうです。

私たちには、SDGsを推進する市原市の取り組みを参考にしながら、限られた資本のもとで、単純焼却や埋め⽴て等の廃棄物処理費⽤とリサイクル費⽤といった両⽴困難なトレードオフ関係の解消を⽬指して、社会全体を俯瞰しながら、地域の持続可能性と経済活性化、市⺠の幸福度を同時に⾼められるよう、⼈やモノ、情報、⾦等の関連する要因、それらの関係性や流れを、再設計する視点が求められていくようです。

市原市環境部資源 循環推進課

市原市から、千葉県ひいては国内外に向けた、サーキュラーエコノミー情報の発信
⽇本有数の⽯油化学コンビナートを有する市原市だからこそ、サーキュラーエコノミーに正⾯から取り組み、市原市がしっかり取り組むことで、県内、国内、海外に情報発信できる、と考えているようです。
2021年“市原市SDGs戦略” を策定し、ポリスチレンがひと段落した現在、プラスチック資源循環促進法の第33条に基づくプラスチックの⼀括回収について、3年間の実⾏計画を策定して試験回収を⾏い、結果も公表する等、他市町村に先駆け、率先して取り組んでいます。
プラスチック資源循環促進法第33条は、環境⼤⾂ならびに経済産業⼤⾂が認定した場合に、市区町村は認定再商品化計画の範囲において、選別保管等の中間処理を省略するなど、効率的な再商品化を図ることができるようになる制度です。
市原市は、“様々な市町村から寄せられている数多くの問い合わせ等に対して、情報提供することで、他の市町村には、参考にしていただけるのではないか” と考え、取り組んでいます。

市原市環境部資源 循環推進課

京葉臨海コンビナートカーボンニュートラル推進と、廃プラスチック・リサイクルの連携
2024年度に、千葉県知事をトップとする京葉臨海コンビナートカーボンニュートラル推進協議会において、産学官の協議のもと、京葉臨海コンビナートのカーボンニュートラル実現に向けた⽅向性を整理し、公表。
この中では、カーボンニュートラルの実現に向けて、廃棄物(廃プラスチック等)、バイオマス、排出されたCO2の活⽤を基本としています。
具体的な議論については、2025年度以降、千葉県主導のもと⾏なっていく予定、とのことですが、市原市の基幹産業である⽯油化学産業におけるカーボンニュートラル実現に向けては、廃プラスチックのリサイクルが不可⽋であることから、引き続き関係各所との協業、連携を進めていきたい、とのことでした。


国内外に先駆けてスタートした、“市⺠参加のケミカルリサイクル” という画期的な取り組み。
“⽇本の縮図市原市” から始まる、産業界と市⺠を巻き込んだソーシャル・イノベーションの進捗から⽬が離せません。

協議会としては、市原市とデンカ、東洋スチレンの取り組みを参考に、私たち⼀⼈ひとりが⾃分ごととしてオーナーシップを発揮し、また、市原市で拠点回収を担当された町会の⽅々のように、それぞれの局⾯でリーダーシップを発揮して、⼀⼈でも、⼀社でも解決できない社会問題に皆で取り組み、循環経済・社会を実現しやすい環境づくりに貢献していきたい、と願っています。
皆さまの参加・ご協⼒をお待ちしています。

▶後編“東洋スチレンの取り組み”はこちら

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